動物と植物の違い


 普段、あまりにもあたりまえすぎて考えたこともない事柄が、ある本との出会いで大きく目を開かれることがある。
 私は今でこそ山奥で農業をしているが、学生時代は電気科に進み、生物学系は苦手で学んだことがなかった。無機質な工学系が好きで、有機質な生物系は性に合わなかったのである。しかし今、ここで自然に触れ、作物を育てている内に私の好みも少しは変わってきたようで、生物学をのぞいてみようかという気になってきた。そこで、本屋で見つけたのが、「図解雑学・植物の科学、八田洋章編著、ナツメ社」である。この図解雑学というのが気楽に読めそうで気に入った。
 この本で「目からウロコ」が、「動物と植物の違い」である。

 植物と動物の違いはなにか? う〜ん、植物は一カ所に固定され、動物は動き回る。あとは〜、、、なにか分かっているようで分かっていない。

 植物は空気中の二酸化炭素(炭酸ガスーCO2)と土中からの水と太陽の光で光合成を行い、栄養素(デンプン)を作る。つまり、植物は自分の力だけで生きていくことができるのである。ところが動物は自分の力だけで栄養素を作ることができず、植物を食べるか他の動物を食べるしかない。これが植物と動物の根本的な違いである。
 第二の違いは、植物は太陽の光と水と二酸化炭素があれば生きていけるので動き回る必要はない。風で倒れないようにしっかりと根を張り、そこで踏ん張ることが必要である。そのために植物の細胞は固い細胞壁で覆われている。一方、動物はえさを求めて動き回らなければならないので、柔軟な身体が必要である。そのために動物の細胞には細胞壁がなく、柔らかな細胞膜があるだけである。
 この本ではこの二点が動物と植物を分けるポイントとしてあげている。

 それにしても、土中から吸い上げた水を葉の葉緑体(緑色の部分ー葉の表の部分)に送り込み、葉緑素が水を水素と酸素に分解し、その水素と二酸化炭素からデンプンを作り(エネルギーとして太陽光を使う)、余った酸素を空気中に放出する、その仕組みはあまりにも巧妙で、驚嘆するばかりである。
 人間を含めて動物はみな植物から栄養をもらい(肉食動物も間接的に)、酸素をもらって生きている。私たちは植物なしには一時たりとも生きてはいけない。人間はこの自然に対して、もっと謙虚にならなければと思う。